フォーラムエイト、SPU招待特別講演・ネットワークパーティを開催~京大・藤井教授「防災投資は費用対効果が高い」

 フォーラムエイトは9月9日、エクシブ京都 八瀬離宮(京都市)において「SPU招待特別講演・ネットワークパーティ」を開催した。
 毎年各地でスーパープレミアムユーザ(SPU)を対象に特別講演会とネットワークパーティを実施している。同イベントでは、特別講師による貴重な講演や、同社のVR・BIM/CIM・FEM・クラウドソリューションをはじめとしたプレゼンテーション等を行っており、講演終了後には食事を交えながら会員らで歓談するネットワークパーティも行っている。これまでには、パックンことパトリック・ハーラン氏(同社CMキャラクター)や前川徹氏(東京通信大学教授)、森下千里氏(衆議院議員)等を特別講師として招き講演を行っている。
 冒頭、登壇したフォーラムエイト代表取締役社長の伊藤裕二氏が挨拶、FORRUM8の活動と製品開発について説明した。
 フォーラムエイトは「100億円宣言」を行い、100億企業成長ポータルサイトに宣言企業として掲載された。「100億宣言」は、経済産業省および中小企業庁が、国内の経済成長の機運醸成のために進めている施策で、これからの成長を支える中小企業が、飛躍的成長を遂げるために「売上高100億円」という目標を目指して、実現に向けた取り組みを行っていくことを宣言するもの。宣言による補助金・税制の活用に加え、地域・業種を超えて繋がれる経営者ネットワークへの参加、100億円企業成長ポータルへの宣言が可能になる。フォーラムエイトでは今後、2031年の売上高100億を目指すという。
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 今年の講師は京都大学大学院工学研究科教授の藤井聡氏。藤井氏は京都大学大学院・工学研究科・都市社会工学専攻教授、同大学レジリエンス実践ユニット長、内閣官房参与(第2~4次安倍内閣、防災減災ニューディール担当)、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会副会長。1968年生。京都大学卒業後、同大学助教授等を経て現職。専門は公共政策論。著書は「列島強靭化論」「巨大地震Xデー」「大衆社会の処方箋」等多数。表現者クライテリオン編集長。
 講演名は「国土強靱化と日本再生」。
 東日本大震災(2011年3月11日)を契機に、同年3月22日に国会で「列島強靭化」の必要性を提言した。消費税増税やTPPなどに反対するともに、災害から立ち直り「より強い国家を築く」ことを目指した構想を提示。その内容を急ぎまとめ、「列島強靭化論」(文藝春秋)として出版した。
 強靱化の本質は、単なる堤防建設や耐震補強だけではなく、国家構造そのものを根底から強くすること。
 また、問題は「東京一極集中」。バスケットに卵をすべて入れる危うさを例に、首都直下地震・南海トラフ地震のリスクを強調した。大都市圏に人口の集中、特に首都圏への集中は、首都直下地震の発生が確実されるため、その被害は復興余力を奪う。そのため国土の分散化が急務とした。
 災害復興には「積極財政」が不可欠である。緊縮財政に縛られれば復興も強靱化も進まず、人命を奪う「不作為の罪」となる。国債発行や補正予算で徹底的な防災投資を実施すべきと強調した。
 また、防災投資は「経済成長」と不可分。経済が停滞すると、公共部門も民間部門も耐震化や更新投資を進められない。ニューディール的積極財政によって国土全体を強くできる。
 国土分散化には「地方を豊かにすること」が必須。高速道路・新幹線などのインフラ整備に加え、農業を守り育成する政策が必要。一方TPPによる農業打撃を強く批判した。日本の食糧安保・農村維持が欠かせないと訴えた。
 「防災=インフラ整備」「国土構造分散」「積極財政」「経済成長」「地方と農業の再生」の5つを同時並行で進めることが「国土強靱化」であり、それが日本再生につながる。
 災害リスクと経済被害の試算も行った。
 南海トラフ地震、首都直下地震、高潮・洪水などを対象に、20年間累計で数百兆~千兆円規模の経済被害が想定される。
 南海トラフ地震で1241兆円、首都直下地震で1063兆円の経済被害が予測されているが、南海トラフ地震の場合、道路、港湾/漁港、海岸堤防、建物耐震強化などに58兆円以上を投じることで、396兆円の被害を抑制(減災額)、その比率(減災率)は31%に達する。首都直下地震の場合も、道路、港湾/漁港、建物耐震強化に21兆円を投じることで、減災額410兆円、減災率38%を実現することができる。
 地震に対する防災は非常に難しいが、高潮に対する防災は比較的簡単である。とにかく堤防を強くすればよいので、例えば東京湾は5000億円を投入すれば高潮被害の70%を軽減できる。
 結論として、防災投資は費用対効果が非常に高い。しかし、財務省がプライマリーバランス黒字化目標を縛りに使い、防災投資を阻んでいる。本来の財政規律は「借金上限」ではなく「プロジェクトごとのリターン評価」であるべき。民間企業はリターンが見込めるなら借入れをして投資するのに、政府だけがやらないのは不合理である。政治家は財務省に弱く、真に積極財政をやれる胆力がない。
 防災投資は巨額だが、それ以上のリターンがある。それにもかかわらず財務省の緊縮思考が阻害要因となっていると繰り返し訴えた。