「空飛ぶ基地局」のHAPS、ソフトバンクが日本でプレ商用サービス開始

 ソフトバンク(宮川潤一代表取締役社長執行役員兼CEO)は、成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、HAPS)のプレ商用サービスを、2026年に日本国内で開始すると発表した。HAPSの商用化により、大規模災害時の通信サービスの提供に加え、6G(第6世代移動通信システム)時代を見据えて、ドローンやUAV(無人航空機)向けに安定した通信環境を提供する次世代の3次元通信ネットワークの構築を目指すとしている。

 この一環として、浮力を利用して飛行を維持するLTA(Lighter Than Air)型のHAPSを開発するSceye(スカイ、本社:米国ニューメキシコ州、ミッケル・ヴェスターガード・フランドセン創業者兼CEO)に出資し、日本国内におけるHAPSのサービス展開に係る独占権を取得する契約を、2025年6月20日に締結した。ソフトバンクは、これまで開発を進めてきたHTA型のHAPSに加えて、新たにLTA型のHAPSを活用することで、早期の商用化を推進する。

 SceyeのHAPSは、空気より軽いヘリウムの浮力で上昇し、長時間滞空できることが特長。これまでに20回以上の飛行に成功しており、米国州政府および民間企業との連携を進めている。SceyeはHAPSを活用することで、既存の通信インフラが届きにくい地域への通信環境の拡充や、気象災害のリアルタイム検知と即時対応、精密な環境モニタリングを可能にしている。

 HAPSは「空飛ぶ基地局」と呼ばれ、高度約20kmの成層圏から広範囲に通信サービスを提供。従来の通信は、地上のスマホや車などを対象にした2次元の通信ネットワークだったが、6G時代においてはドローンやUAVなどの増加により、上空を含めた空間全体をカバーする〝3次元〟の通信インフラの整備が不可欠となっている。

 ソフトバンクは、HAPSが6G時代に欠かせないインフラになると捉え、2017年から業界をリードして大型のHTA型HAPSや要素技術の研究開発を推進。今回、新たにLTA型のHAPSを開発するSceyeと連携することで、HAPSの商用化を進め、次世代の3次元通信ネットワークの構築の早期実現を目指す。

 ソフトバンクは、SceyeのLTA型HAPSを活用し、2026年に日本国内でHAPSのプレ商用サービスを開始する予定。今後想定される大地震などの大規模災害時における通信の復旧や、山間部や離島といった既存のモバイルネットワークの電波が届きにくい地域でのサービス提供を想定。衛星通信よりも高速・大容量、低遅延で、かつニーズに応じたサービスエリアの変更などの柔軟な運用ができるHAPSの特長を生かし、通信インフラのレジリエンス強化と全国的なユニバーサルサービスの実現を図る。大型のHTA型HAPSについても、引き続き開発に取り組み、商用サービスでの活用を目指す。

 ソフトバンクの宮川社長は、「ソフトバンクは、世界に先駆けて2017年からHAPSのサービス化に向けて取り組んできました。これまで研究開発を進めてきたHTA型のHAPSに加えて、今回のSceyeとのパートナーシップにより、LTA型のHAPSを使って2026年にプレ商用サービスを開始できることをうれしく思います。成層圏からの広域通信は、既存のモバイルネットワークの電波が届きにくい地域へのカバレッジ拡大や、大規模災害時における迅速な通信復旧手段としての役割が期待されています。また、6G時代に向けて空のモビリティに対応した3次元通信ネットワークが求められる中で、HAPSは社会を支える基幹インフラになっていきます。ソフトバンクは、HAPSの社会実装に向けて、今後も技術開発とサービス実証を着実に進め、持続可能で信頼性が高い通信基盤の構築を通して社会課題の解決に貢献していきます」とコメントした。

 SceyeのミッケルCEOは、「ソフトバンクは、非地上系ネットワーク分野において豊富な実績を有し、長年にわたって成層圏を次なるフロンティアとして位置付け、世界が直面する喫緊の課題解決に取り組んできました。同社による出資は、Sceyeのプラットフォームの実現可能性を強く裏付けるものです。私たちは、ソフトバンクを戦略的パートナーとして迎えられることを誇りに思うとともに、商用サービスの実現に向けてパートナーシップを加速していきます」とコメントした。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。