ワイヤレス給電実用化向け事例等を紹介 ブロードバンドワイヤレスフォーラムが講演会開催
ブロードバンドワイヤレスフォーラム(BWF、会長・森川博之東京大学大学院工学系研究科教授)は2026年2月17日、東京都港区の品川シーズンテラスカンファレンスで活動状況の報告会を兼ねた講演会を開き、会員等約100人が参加した。パネルディスカッションでは、森川会長がモデレーター、日経ビジネスLIVE編集長の堀越功氏がコメンテーターを務め、パネリストに、田邊勇児氏(エイターリンク取締役/CTO)▽阿部晋士氏(パワーウェイブ代表取締役/CTO)▽関野昇氏(電気興業主任研究員)▽丸田佳織氏(三菱総合研究所主席研究員)―を招いて「無線給電 市場拡大のカギは?」と題して意見交換した。
BWFは、新たな無線通信技術を用いたシステムやサービスの早期実用化及び国際展開を図るため、新たな無線通信技術に関する研究開発、調査、情報の収集、関係機関との連絡調整、普及啓発活動等を行い、新たな電波利用システム及びサービスの健全な発展に寄与することを目的に2009年7月に設立。具体的には、①新たな無線通信技術に関するテストベッドを活用した研究開発②新たな無線通信技術に関する調査③新たな無線通信技術に関する情報の収集、交換及び提供④新たな無線通信技術に関する関係機関との連絡調整⑤新たな無線通信技術に関する普及啓発⑥その他フォーラムの目的を達成するために必要な活動―について取り組みを進めており、一般社団法人YRP研究開発推進協会が事務局を務めている。
基調講演では、総務省総合通信基盤局電波部長の翁長久氏が「電波政策の動向について」と題して講演。国内の最新の電波政策の現状と将来の展望について紹介した。

翁長氏は5Gネットワークの普及拡大について言及しながら、サブ6やミリ波の活用、さらには衛星通信やHAPSを用いた空・海へのエリア拡張について紹介した。特にミリ波(28GHz帯等)の活用が課題とし、「日本でシェアの高いiPhoneが国内モデルでもミリ波に対応すれば、状況が大きく変わる」と期待。また、ローカル5Gの規制緩和や、自動運転(ITS)に向けて世界標準である5・9GHz帯をITS用に確保し、既存の放送業務(STL)からの移行を進めているほか、遠隔監視のための高画質カメラ映像の伝送など、通信インフラの信頼性確保に向けてロードマップの作成を進めていることや、災害時の通信確保など社会課題解決のための具体的な施策を示した。また電波オークションの準備状況や、日本の通信産業の国際競争力強化に向けた技術開発のロードマップについても説明し、「日本の強みである素材・部品分野の技術を活かしつつ、AIとワイヤレスを融合させた『フィジカルA』などの重点領域に注力していく方針」等としながら、4月に向けた各種報告書の取りまとめや、電波利用料予算の策定を急いでること等を説明した。
続いて「BWFにおけるWPT実用化への取り組み」と題して、ケーブルを使わずに空間を介して電力を送電する無線電力送電(ワイヤレス給電)技術(Wireless Power Transfer、WPT)の実用化に向けた活動や制度化に向けた現状について、各TG(タスクグループ)を代表して、庄木裕樹氏(BWF WPT―WGリーダ、エイターリンク)▽勝永浩史氏(標準開発部会/TG6リーダ、丸文)▽草野芙美子氏(標準開発部会/TG5リーダ、デンソー)▽山崎高日子氏(標準開発部会副主査、三菱電機)▽関野昇氏(標準開発部会副主査、電気興業)が講演した。
このうち庄木氏は、「BWF/WPT-WGの活動概要」と題して講演。前提として、WPTが電磁誘導等を用いる「近接結合型」と、電波を利用する「空間伝送型」に大別され、それぞれ用途に応じた制度整備が進められているとし、2016年の電気自動車(EV)向けを皮切りに、2024年には工場等で活用される6・78MHz帯が省令化されたほか、空間伝送型についても2022年に屋内利用が制度化され、現在屋外利用や免許不要な運用に向けた検討が行われている現状を紹介。現在はタスクグループを中心に、産業用ロボットや大型バス・トラックといった多岐にわたるアプリケーションごとの性能評価や、国際標準化への対応を加速させているほか、人体保護のための影響評価や電波干渉対策(EMC)についても専門のグループが国内外の組織と連携しながら、安全かつ利便性の高い無線給電社会の実現に向けた取り組みを続けているとした。
パネルディスカッションでは、堀越氏からの「市場拡大に向けた壁をどう感じているか」という質問に対し、田邊氏は「まだ一般の理解が進んでおらず顧客が何を求めているか、マストハブ(不可欠なもの)を探すのが難しい。対話を深めて課題を見つけるのが重要」と述べた。阿部氏は「目に見えないエネルギーを送ることへの不安に対し、いかに世間に納得してもらうか。安全性や迷惑をかけないための説明に時間をかけている」とした。関野氏は「Wi―Fiのように使い分けが求められる。世間が許すコストでの導入や安全性の担保が壁」と話した。丸田氏は「アプリケーションユースケースありきで議論を進める必要がある。単に技術として優れているのではなく、実際に使われることをイメージして、かつ既存技術の代替でなくWPTの運用を前提に見直してコストや耐久性といったデザインを進めることで制度化といった動きが可能となる」と述べた。
議論を踏まえて堀越氏は、「ワイヤレス給電が当たり前になって孫の代には充電という言葉が専門用語になる社会という言葉が印象的カギとなる」と話した。
また森川会長は「それまでニッチだったWi―Fiはスマホが出ることで一気に普及した。普及後に議論されるのは消費電力。そこは再生エネルギーとセットで考える必要がある」と話していた。
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