日本ケーブルテレビ連盟、「2030ケーブルビジョン」をアップデート(1)

一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟(東京都中央区)は、6月24日に連盟内で記者説明会を開いて、2023年の第2版に続きアップデートした「2030ケーブルビジョン(第3版)」をリリースすると発表した。連盟は21年6月、ケーブルテレビ業界が、地域とともに成長し、更なる発展を遂げるために、30年に向けて業界が担うべきミッション、目指すべき姿及びアクションプランとして「2030ケーブルビジョン」を策定した。今回、30年に向けてテクノロジーの進捗等周辺環境の変化やアクションプランの進捗等を踏まえ再度アップデートした。会見では、あわせて、業界のこれまでの地域ビジネス活動実績を踏まえ今後の戦略を示した「地域ビジネス戦略2025」の詳細を説明した。これは、2030ケーブルビジョンの「サービス・ビジネスが変わる」のアクションプランの具体的施策の一つとして、地域ビジネス推進タスクフォースが正会員オペレータ向けに作成したもの。

記者説明会の冒頭、今林顯一日本ケーブルテレビ連盟理事長が次のように開会挨拶を行った。
 今年は放送開始から100年で、ケーブルテレビ事業が始まってから70年目の節目になります。日本の半数以上の世帯がケーブルテレビ経由で視聴していますし今では電話、インターネット、モバイル通信事業でも存在感を占めるまでに成長しました。
 一方で最近は災害が相次いで、1995年に阪神淡路大震災が、2011年に東日本大震災、昨年は元旦に能登半島の大地震がありました。また9月には追い打ちをかけるような豪雨災害もありました。最近では各地で山火事などもあって、ちょっと慣れない災害でしたので、なかなか向き合うことができていませんがこういった災害からは逃れることができない国である、あるいはそういうような環境にあると言えるかと思います。また国の方でもいろいろ地方創生ということで言われておりますが、その大きな要因となっています人口減少、これは人手不足とか地域コミュニティが衰退しているとか、あるいは年金医療などの制度疲労にも繋がってきており、生活経済に大きな影響を与え始めています。
 それから産業経済では失われた30年と言われて、インフレ、生産年齢人口の減少で、これまで成長戦略として発表してきたものが、なかなか延長線上では通用しなくなってきているということです。
 これは国や地域が全体として抱えている問題で、ケーブルテレビだけの問題ではもちろんないのですが、ただ、こういう国家的な重要課題、これはケーブル事業者にも大きな影響を与えておりますし、それからケーブルテレビの場合は、地域の生活者が従業員となっており、また経営者でもあるわけです。地域を基盤としている意味で、他の事業体とはですね大きく違う。特に大手の通信事業者とは違うわけです。そういうところで地域を基盤としているだけにそこが競争力の源泉となっており、またよりどころになっていますので、より真剣に考えなければいけないと考えるわけであります。
 そこで連盟では「2030ケーブルビジョン」を4年前に策定公表して、これまでに築き上げてきた情報通信のインフラ、それから各地域における様々な経験を資産として地域DXを担うということを宣言しました。4年間、連盟の各地での先駆者たちが、ケーブルでもテレビでも電話でもない事業に多くチャレンジをして成果をおさめてきました。
 5GとかIoTとか生成AIとかこういった最新技術も取り込んで、実際の地域課題の解決に貢献しようとしています。
 それからケーブルテレビ特有の経営資源としてコミュニティチャンネルがありますが、配信プラットフォーム「ロコテレ」44社59局が参加しています。それからケーブルIPスティックを活用した配信への挑戦というのも始まっています。IoTを活用した各種事業大にも参画している事業者が多く、こういった成果は会議で生まれているのではなく、事業者の現場で生まれているわけです。
 本日ご説明するのは、この4年間の取り組みの成果を基にしたアップデート版の「2030ケーブルビジョン」の紹介を通じて各地域での取り組みのこの一端、息吹を感じていただきたいと思ったからです。アップデートにこだわったのは、ペーパーばかり作っていても、仕方がないのでケーブルテレビ事業者の場合は、あくまでも実際に取り組んでいる実績の積み重ねが大事で、地域の皆さんと築き上げてきた実績、これをご覧いただきたいということです。
 政府において6月13日に「地方創生2・0」の基本構想が発表されて「10年後に目指す姿」ということで、若者や女性にも選ばれる地方をつくる。地域資源を活用した高付加価値型の地方経済をつくる。安心して暮らせる地方をつくる。都市と地方が互いに支え合い、一人ひとりが活躍できる社会をつくる。AI・デジタルなどの新技術が活用される地方をつくる。こういったビジョンが示されています。その通りだと思います。
 ケーブルテレビ事業者が、4年前から既に同様のビジョンを掲げて取り組みを開始して、成果を上げつつあることをご覧いただければ、こういった地域と地域、あるいは地域と都市、あるいはその生活者と経済を結ぶ、こういった担い手としてのフロントランナーとしてのケーブルテレビを感じていただけるのではないかと確信しています。
 もう一つの会見内容は、「2030ケーブルビジョン」で示された6つのビジョンのうちのひとつ『サービス・ビジネスが変わる』を推進するタスクフォースとして「地域ビジネス推進タスクフォース」を発足して、2年間活動を続けてきました。その集大成として、地域ビジネスの実践アプローチ、あるいはエッセンスというものを取りまとめたものが、今日ご説明する「地域ビジネス戦略2025」です。地域での取り組みの実践の中心部分がこの中に掲載されています。
 政府において地方創生に関係する方々、あるいは地域で課題解決に取り組まれている行政の方々、それから産業界、地域でビジネスを展開している方々など、多くの方々にこれを知っていただいて、地域のケーブルテレビ事業者との連携によって、未来を切り拓くお手伝いをさせていただきたいと考えています。

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