
日本ケーブルテレビ連盟、「2030ケーブルビジョン」をアップデート(2)
「2030ケーブルビジョン」第3版のアップデートポイント
浅沼哲雄日本ケーブルテレビ連盟企画推進部長は以下に記載した「2030ケーブルビジョン」第3版のアップデートポイントを説明した。
【アップデートの背景・目的】
2030ケーブルビジョンの策定から4年、第2版のリリースから2年が経過した。この間、事業環境は刻々と変化しているが、当初掲げたビジョン・ミッション、そして目指すべき姿は揺らぐことなく、むしろその重要性は一層増している。
そこで業界内に向けては引き続き指針として活用してもらえるように、業界外に向けてはケーブルテレビ事業者の取り組みを認知してもらえるように最新動向を反映したアップデートを行った。
また、策定から4年を経た今、アクションプランの進捗と手応えを振り返り、現在地点を明確にするための報告書「2030ケーブルビジョン 2025年時点での取組み状況レビュー」も併せて用意した。
今回リリースするドキュメントは▽「2030ケーブルビジョン」第3版▽「2030ケーブルビジョン」第3版修正箇所明示版▽「2030ケーブルビジョン」第3版のアップデートポイント▽2030 ケーブルビジョン2025年時点での取組み状況レビュー―となっている。
【主なアップデートポイント】
■3章 今後のトレンド
◇地域コンテンツ
▽地方民放の体制変更等による地域放送の再価値化、 FASTをはじめ新たな配信手法、コンテンツビジネス手法の多様化、生成AI技術を活用した放送制作及び業務フローの高度化が一層進展、AI活用コンテンツによるユーザーエンゲージメントやUXの向上といったトレンドなどを追記
◇テクノロジーロードマップ
▽全般的に生成AI、大規模言語モデル(LLM)関連の記載を大幅に追記▽セキュリティでは、クリプトアジリティ、AIへの攻撃対策、AIセーフティ等追記▽キーメッセージに「ネット上のサービスはクラウド上のAI処理が必要となりアクセス網の広帯域・低遅延化も必須」追記
■4章 2030年に向けた事業環境の見通し~何もしなければ待ち受けるシナリオ~
▽RGU契約数を当初想定に対して2020年~2023年の経過について、業界レポートでの公開数字を追記▽放送、固定電話が純減するトレンドは想定通りだが、インターネットサービスは競争
環境激変の中でも微増と善戦していること、ただし、①HFC巻き取り(光化)の最中にある点②FTTHへのマイグレ対応が十分でない事業者は解約増のリスクを抱える点③固定系超高速ブロードバンド市場におけるケーブルの市場シェアは縮小傾向にあり、コネクテッドTV(CTV)普及に伴いテレビにつながるNETとしてもシェアを縮小していると想定されるなどから、推移を注視する必要は変らない旨追記
■5章 2030年のケーブルテレビが担うべきミッションと目指すべき姿
◇目指すべき姿~6つのアプローチ「IDで変わる」▽「ケーブルIDPFで地域の課題解決と経済圏構築を目指す」に改訂
■6章 2030年に向けたアクションプラン
◇放送が変わる
最近の動き=「ケーブルテレビが小規模中継局等の代替手段として、IPマルチキャストやIPユニキャストとともに認定」等々、全面アップデート
アクションプラン=コミュニティチャンネル放送は差別化できる重要な経営資源として再認識。「ケーブルテレビ事業者主導による、柔軟かつ効果的な映像配信環境構築に向けた検討」等、追記
◇コンテンツが変わる
最近の動き=【安心安全・災害対応】2024年能登半島地震では、ライフラインとしての地域コンテンツ情報の確保と継続的な提供の重要性が確認された。平時からのネットワーク型ライブカメラの利活用はじめ、地域メディアの役割は益々、重要等々、全面アップデート
アクションプラン=〈satonoka JDS〉と〈えんてれ(JCC)〉を利用価値のあるチャンネルに育てていく。配信PFである〈ロコテレ〉(ニューメディア)、ケーブルテレビ業界の配信基盤の選択肢として定着、多様な視聴ニーズに応えていく、等、追記
◇ネットワークが変わる
最近の動き=「2025年以降に光電融合デバイスで低消費電力も実現し、IOWN 2.0を提供開始予定」等追記、全面アップデート
アクションプラン=ケーブルテレビのインフラ設備について、平時は安定したサービスを提供できるよう最適化を図り、加えて、大規模災害の発生時にも利用者へのサービスが継続できるよう強靭化を推進する。「サイバー攻撃を受けた時の如何に被害を最小化し業務の継続と回復させるかのサイバーレジリエンスの浸透」「災害の激甚化に備えたネットワークの強靭化」等、追記
◇ワイヤレスが変わる
最近の動き=Starlink等、衛星通信サービスの台頭、XGモバイル推進フォーラム設立等追記、全面アップデート
アクションプラン=「2025年以降は5G NR化へ順次移行を進める」「ローカル5Gは共同利用制度の活用によりエリア展開を推進」 多様なIoTソリューションを活用したBtoB/G顧客接点の拡大および事業モデルの構築を一段と進める等、追記
◇IDで変わる
最近の動き=次期ケーブルIDプラットフォームシステム化計画に基づき、ケーブルIDプラットフォームシステムの2024年2月システム更新完了等、追記
アクションプラン=新たな機能の活用を促進に言及、目指すべき姿として新たに『ケーブルIDPFで地域の課題解決と、経済圏構築を目指す』を定義
◇サービス・ビジネスが変わる
最近の動き=「地方創生2.0」「地域生活圏」「ローカルマネジメント法人」等追記し全面アップデート
アクションプラン=パートナーシップを推進を掲げ、特に、スマートシティに向けた「データ連携やエリアデータ利活用」は、先行事業者によるユースケースが重なり、この指とまれ方式の業界横提案をスタート、今後一層の推進。地域ビジネス推進TFの2年間の活動を総括した『地域ビジネス戦略2025』、その中で「地域DXで《街と人の健康》の担い手になる」を掲げたこと等、追記
◇業界が変わる
アクションプラン=「業界オウンドメディア(noteによる大学生をコアターゲットにした業界情報発信)は、会員各社の採用活動シーンで利活用を進める」等追記
■8章 2030年への飛翔
業界の取扱高として「業界レポート2024(2024年3月末数字の集計)」より、現在の構成比、取扱高を追記。放送の減少を、通信の増加とその他の大幅増加で業界の成長を支えている構造が確認できる
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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