「AI と働き方の現在地:2025年の日本」発表、アサナジャパン

エンタープライズワークマネジメントプラットフォームの米リーディング企業、Asana, Inc. (本社・サンフランシスコ、Asana) の日本法人・アサナジャパン株式会社(東京都千代田区)は7月29日、日本国内のナレッジワーカー2034名を対象に今年4月に実施した調査レポート「AIと働き方の現在地:2025年の日本―なぜAIだけでは、非効率な仕事がなくならないのか―」を発表した。同レポートは、日本のAI導入が重要な転換期を迎えていることを示唆し、AIのスケール戦略を持つ企業が競争優位性を確立する一方、そうでない企業は停滞する現状を明らかにしているとしている。
同社はチームの目標設定から戦略の実行、日々の業務管理を効率化するため、同名のクラウドベースのワークマネジメントプラットフォームを手掛けている。2008年に創業し、2019年に日本法人を設立。同プラットフォームは、AIパートナー(Open AI、Anthropicなど)による生成AIと大規模言語モデル(LLM)を搭載することでAIがチームメイトとして仕事をサポートしており、有料顧客数は世界200カ国に16万9千社(2025年4月現在)、有料ユーザー数350万人以上(同1月現在)、世界のフォーチュン企業500社のうち85%(同7月時点)がAsanaを利用しているという。
 同社では、組織が直面する変化に対応し、未来の働き方の課題に備えるための最先端の調査レポートを発表しており、日本を対象とした調査は昨年発行した「働き方の現在地:2024年の日本」に続き2度目となる。
 同社によると、日本はG7で最も高齢化が進み、出生率も最も低い国の一つであり、労働人口の減少が深刻な課題となっている。こうした背景の中、日本企業がAIの可能性を最大限に活かせるかどうかは、今後の競争力を大きく左右する分岐点となるが、AIの導入が進んでいるにもかかわらず、調整業務(コーディネーションワーク)に費やす時間がむしろ増加しているという〝生産性のパラドックス〟が明らかになったという。
 レポートによると、日本のナレッジワーカーの週あたりのAI使用率は、わずか1年で23%から35%へと大幅に上昇。一方で、AIの活用を事業全体に拡大している組織の割合はわずか17%にとどまり、ほとんどの組織でAIの導入は依然として断片的でさまざまなツールに分散し、基幹業務には統合されていないという。
 日本では、AIの活用は増加している一方、働き方は改善されておらず、日本のナレッジワーカーの58%は、戦略的でインパクトの大きな仕事ではなく、価値の低い調整作業に1週間の大半を費やしている。これは単なるテクノロジーの問題ではなく、業務全体に関わる運用上の問題であり、多くの企業では、根本的な仕事の進め方は変わっていない。日本のナレッジワーカーの3分の1以上(35%) が、自社の働き方は時代遅れであると回答しており、経営層ではその割合が39%に上昇。この問題が認識されているものの、解決に至っていないことを示している。
 調査では、組織は大きく「AIスケーラー」と「非スケーラー」の2つに分かれると指摘。AIスケーラーは、複数のワークフローにAIを導入しており、測定、調整、継続的な改善を通じて効果的に運用している組織で、非スケーラーはAIを試験的に導入し、一部の業務に採用しているものの、全従業員への拡大には踏み切れていない組織を指す。
 AI スケーラーは、仕事そのものを見直すことから始める傾向にあり、AIを組み込むことを目的にワークフロー全体を再構築している割合が 1・75倍高いという。一方、非 AI スケーラーは、老朽化したシステムにAIを上乗せすることで変革を図ろうとしているが、うまくいかないのが実情という。またAIスケーラーは、ツールの導入にとどまらず、職場の摩擦を生む根本的な要因を特定し、解決することに注力し、組織全体の連携、情報伝達速度、変化への対応力、業務過多といった4つの職場負担を軽減するためにAIを活用しているとしている。具体的なアプローチ事例は次の通り。
 ①連携(Connectivity)の負担:AIを活用した共通のツールの使用によって、組織横断型のコミュニケーションや業務遂行の促進。AIを活用することで、連携が改善されたと報告する可能性が 171% 増加。回答者の10%が「組織全体でチーム同士が効果的に連携している」と回答し、38%の従業員が「毎週必要な情報を見つけるのに苦労している」と回答した。
 ②ベロシティ (Velocity)の負担:AIを活用し、ルーチン業務の自動化や優先順位付けを最適化。AIを活用することで、ベロシティ(仕事の進行速度) が改善されたと報告する可能性が133%増加した。日本の労働者のわずか9%が、「自分の組織ではチーム間で情報やアイデアが迅速に伝達されている」と回答。またナレッジワーカーは、一日3時間を必要な情報を探すために浪費しており。44%が、緊急でないタスクや依頼で日常的に仕事を中断されると回答した。
 ③レジリエンス(Resilience)の負担:AIを活用し、リスクを早期に検出し、計画を柔軟に調整。AIを活用することで、レジリエンスが改善されたと報告する可能性が157%増加した。調査対象の64% が「同僚が重要な情報を隠している」と回答し、46% が「チームメイトが新しいプロジェクトに巻き込まれないように、自分の仕事量を誇張しているのを見たことがある」と回答。56% が「同僚が自分の担当分野を過度に保護している」と報告している。
 ④キャパシティ(Capacity)の負担:AIを活用し、ルーチンタスクを自動化し、従業員がより創造的な業務に集中できるよう支援。従業員は、AIによって情報を探す時間が短縮されたと答える可能性が、161%増加。63% が過去1年間に「燃え尽き症候群」を経験し、ナレッジワーカーの作業時間のうち58%が、過去6か月間に、対応できないほどの仕事量を経験している。また57%のナレッジワーカーが、「生産性を高めるよりも、忙しく見せることを優先している」と回答した。
 Asana ワーク・イノベーション・ラボのワーク・イノベーション・リード、マーク・ホフマン博士は次の通りコメントしている。
 「日本企業は、AI導入において戦略的な転換期を迎えています。AIを単なるツールとして導入するのではなく、組織全体の働き方を再設計し、従業員のエンパワーメント、連携、レジリエンス、そして効率性を高めることで、AIと人との協働が促され、AIの真価を発揮できます。日本企業が、AIスケーラーへと変革を遂げ、グローバル競争力を高めるための情報を提供できるよう、Asanaは引き続き尽力してまいります」。
 レポートではこのほか、日本企業がAIを導入する上で、次のような強みを活かすことを推奨している。
 ▽プロセス重視の文化:構造化された高品質なプロセスをAIで強化し、早期の問題発見、リアルタイムなパフォーマンス追跡、改善提案などを実現。
 ▽協調性を重視する文化:チームの調和を重視する文化を基盤に、AIを活用して責任範囲を明確化し、部門間の連携を促進。
 ▽長期的な視点:長期的な計画に重点を置く日本の企業文化とAIを連携させ、段階的かつ持続可能な変革を支援。
 レポート全文では、AI導入の現状、課題、そしてAIスケーラーへの変革に向けた具体的なステップについて、より詳細な分析を提供している。
詳細は次のリンクからダウンロードできる。

この記事を書いた記者

アバター
kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。