「より広い活動と技術の周知が重要」 フォーラムエイト・伊藤社長、国土強靭化への思い語る

 フォーラムエイトでは2019年から、全国中核都市で各自治体でのインフラ分野での取り組みの紹介と、デジタルを通じた貢献を目的とした「FORUM8地方創生・国土強靭化セミナー」を毎年開催している。2026年は「サスティナブルな社会、新しい地方経済生活環境創生へ」をテーマに、過去最多となる全国22カ所で有識者による講演や、設計・解析、3DVRなど、新しい地方経済・生活環境創生を後押しする最新技術やソリューションを紹介する。同社の伊藤裕二社長に2025年を振り返ってもらうと共に、2026年に向けた意気込みを聞いた。
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 ―2025年の第7回地方創生・国土強靭化セミナーを振り返って
 国土強靭化という言葉自体がもう一般的に知られるようになってきている。参加者は我々のユーザーがほとんどだが、それでも地方創生や国土強靭化という意味がよく浸透してきたという印象はある。
 広く世間一般に知っていただかないと、おそらく国や地方自治体での予算編成でコンセンサスを得ることができない。そのため一般の方々を含めてより広く活動や、そこに技術が伴うということを知っていただくことが重要となる。
 そういった意味で認知されてきた印象はある。防災庁の計画があるという意味でも関わりがあり、防災意識を高めるということにもつながっていると思う。
 ―2025年を振り返ると、西日本を中心に豪雨や台風災害が頻発した印象がある。フォーラムエイトでは各種ソリューションも展開されているが、印象に残る活用事例はあるか
 25年度インフラDX大賞国土交通大臣賞を寿位受賞した熊本県玉名市の水害への対策や取り組みが印象的。浸水時と避難方法をUC―win/Roadでリアルに再現した3DVRを使ってシミュレーションする取り組みで、大雨の時も皆さんうまく活用して避難方法の周知が進んだという印象がある。外に出ると危ないということも事前に分かったので、それが徹底されたのではないか。人的被害がほとんどなかったが、メディアのような外部から来た人が流されたという話も聞いた。そういう外部の人々への対策が必要とはなってくるといえる。そういった意味では、地元の方々の日頃からの避難訓練みたいなものがかなり徹底していたところが大きかった。
 もう一つは、地震の時の帰宅困難者に注目した東京都台東区での取り組み。大きなプロジェクトに参画して、三次元での群集流動とかのデータを解析した結果を示して、避難訓練や実際の避難時の計画に使おうという取り組み。
 どれぐらいの交通や人流になるかを把握するところの調査から始まって、基礎データを作って、ある程度試行して、今年の「第24回3DVRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」では準グランプリも受賞した。
 実際にここに住まわれている方からもコメントをもらったが、避難訓練は相当やっていても科学的なアプローチはほとんどやっていないからこれまでは単に経験則に頼っていた。それがこういう科学的な根拠で避難計画が作れるようになる。まだ始まったばかりだが、それをどう周知させるかといったところも含めて気になっているところ。
 ―第8回地方創生・国土強靭化セミナーは過去最大の22カ所で開催される
 これまであまりやれていなかった地方都市、青森や函館、富山、山口等初めてやる場所も多い。ただセミナーがこの名前になってから8回目だが、その前は地方でも開催していた。建設はローカル性が高く、材料やそこの風土とか環境、あと人的資源とかを考えると、産業としては一極集中ではなくて地方点在している。ユーザーさんも地方自治体が企画する設計だったり対策だったり、地元優先でやっている。地方の方がユーザーさんも多いし我々も重視している。
 少しでもお客さんが来やすいように、またネットワークパーティーを通じて、我々とお客さん、それからお客さん同士のコミュニケーションを取れるようにということで開催地域を拡大している。そういうところで本音が聞けたり、情報交換もできる。
 実際今年の「第24回3DVRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」で、システムオブザイヤーを受賞した松江土建さんの「GNSSによる3DVR除雪ガイダンスシステム」は、3年前にセミナーを受講されたことで企画が始まった。
 測位システムから取得した位置情報とUC―win/Roadを連携した3DVRによる除雪ガイダンスシステムで、雪がない時でも訓練できる。
 ―2025年は生成AIの活用が話題となった。御社でも「F8―AI MANGA」をリリースされたが、振り返った印象や今後の事業展開について
 弊社では、AIは設計サポートをしている構造計算ソフトとしては日本で初めてリリースできた。擁壁の設計だが、VRシンポジウムを開催していることもあって取り組み自体は早く始めていた。そこでは三、四年前からAIの可能性に取り組んでいて、構想は頭の中にずっとあった。
 実際に使えるものとして、ChatGPTがリリースされた途端に実装しようということで、今年から「F8AIUCサポート」、設計サポートAIをリリースして我々が出している百種類以上の製品に順番に実装している。
 これまでに製品をリリースしてから30年くらい経っている製品も結構あり、毎日のようにサポートも実施している。設計に関わる質問やそれに対する返答もデータベースに蓄積されている。それをAIに学習させてサポートのベースとしている。過去三十年分のデータ資産が使えるというのはすごい有利な状況。そういったデータを読みやすいパターンに置き換える論理化を進めて登録している。そこを全部自社製のグループウェアでやっている。売上に効果が出るかと言えばなかなかそうとも言えないが、一応過去五年間最高売上は続けている。
 また社内ではAIプロンプトの活用に関するコンテストも毎月やっている。優秀な人も多いので取り組みは速い。問題は著作権。どうやって侵さないで、生成されたものを活用するか。AI MANGAも一緒で、生成したものは我々で相当なチェックしている。
 ―日本はAIが出遅れている印象があるが今後他との連携は
 VRシンポジウムというのは、我々のVRやCGソフトをベースにしている。だから、そこで発表されたアイデアは、ソフトに反映することができるので、そういう意味ではずっと共同研究してるようなもの。中には一緒に事業をやろうという例もある。
 ―あらためて新年に向けた意気込みを
 AI は進行中なのでそれを進化させる。また自動運転もそうだが、あとはヒューマノイド型のロボット。もう既に自立歩行が可能だが、膨大な開発費がかかる。そこはAIでカバーしないといけない。色々なことができるとは言えまだ大変なので、研究開発のシステムとして実用的なことはまだ我々は出せないから、例えば建設や溶接とか危険作業はいっぱいあるので、そこに使える仕組みをヒューマノイド型ロボットの研究で提供していきたい。もう一つは、衛星宇宙ソリューション。月等真空の空間でできる溶接を模擬できるような展示ができるといいなと思っている。大きいビジネスになるということよりも研究開発。
 またソフトウェアの方は、浸水氾濫解析とかをまだまだブラッシュアップしていかないと本当に使えるものにはならない。まだ世界も全然追いついていないが、日本は技術基準を作るのが上手だから、そこに対応したシステムになっている。そこでユーザーは確実に増えていくと考えている。

【第8回FORUM8 地方創生・国土強靭化セミナー:開催スケジュール】
 ■鹿児島・鹿児島市 日時:01月20日(火)▽会場:城山ホテル鹿児島【特別講演】衆議院議員・宮路拓馬氏■福岡・福岡市 日時:01月22日(木)▽会場:ホテル日航福岡【特別講演】衆議院議員・鬼木誠氏■沖縄・那覇市 日時:01月27日(火)▽会場:ホテルコレクティブ【特別講演】那覇市副市長・古謝玄太氏■大分・大分市 日時:01月29日(木)▽会場:ホテル日航大分【特別講演】大分大学理工学部長教授・小林祐司氏■山口・山口市 日時:02月03日(火)▽会場:かめ福オンプレイス【特別講演】参議院議員・江島潔氏■岡山・岡山市 日時:02月04日(水)▽会場:ホテルグランヴィア岡山【特別講演】公益財団法人日本道路交通情報センター副理事長、元静岡県副知事・森山誠二氏■兵庫・神戸市 日時:02月05日(木)▽会場:ホテルオークラ神戸【特別講演】神戸市建設局長・原正太郎氏■大阪・大阪市 日時:02月10日(火)▽会場:帝国ホテル大阪【特別講演】経済産業省近畿経済産業局総務企画部総務課長・黒木啓良氏■奈良・奈良市 日時:02月12日(木)▽会場:ホテル日航奈良【特別講演】奈良県副知事・清水将之氏■愛知・名古屋市 日時:02月13日(金)▽会場:ストリングスホテル名古屋【特別講演】元国土交通省中部地方整備局道路部長・松居茂久氏■福井・福井市 日時:02月17日(火)▽会場:コートヤード・バイ・マリオット福井【特別講演】参議院議員・滝波宏文氏■富山・富山市 日時:02月18日(水)▽会場:オークスカナルパークホテル富山【特別講演】富山県知事政策局次長/広域連携推進監/農林水産部参事(市場戦略推進担当)・塗師木太一氏■長野・長野市 日時:02月19日(木)▽会場:ホテルメトロポリタン長野【特別講演】前橋デザインコミッション代表理事、前群馬県副知事・宇留賀敬一氏■静岡・静岡市 日時:02月24日(火)▽会場:ホテルグランヒルズ静岡【特別講演】前橋デザインコミッション代表理事、前群馬県副知事・宇留賀敬一氏■神奈川・横浜市 日時:02月25日(水)▽会場:ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル【特別講演】衆議院議員・牧島かれん氏■埼玉・さいたま市 日時:02月26日(木)▽会場:パレスホテル大宮【特別講演】前橋デザインコミッション代表理事、前群馬県副知事・宇留賀敬一氏■福島・郡山市 日時:03月04日(水)▽会場:郡山ビューホテル・アネックス【特別講演】未定■岩手・盛岡市 日時:03月05日(木)▽会場:盛岡グランドホテル【特別講演】東北大学災害科学国際研究所教授、副学長・今村文彦氏■青森・青森市 日時:03月10日(火)▽会場:ホテル青森【特別講演】日本大学理工学部土木工学科教授・関文夫氏■北海道・函館市 日時:03月11日(水)▽会場:プレミアホテル【特別講演】日本大学理工学部土木工学科教授・関文夫氏
■北海道・札幌市 日時:03月12日(木)▽会場:JRタワーホテル日航札幌【特別講演】日本大学理工学部土木工学科教授・関文夫氏