
JR東海とスカイピーク、鉄道施設におけるドローン目視外飛行運用の検討で契約
JR東海とスカイピーク(東京都渋谷区、高野耀代表取締役)は、2024年12月に、鉄道施設におけるドローン目視外飛行運用の検討についてコンサルティング契約を締結したと発表した。2025年3月24日に、鉄道施設周辺での安全なドローン目視外飛行の運用を検討するために、ドローン「レベル3・5飛行」の実証実験を実施した。プレスリリース発表は4月21日。
鉄道の安全・安定輸送の確保のためには、鉄道設備の継続的な点検が不可欠であり、JR東海では、係員による目視点検に加え、橋りょうなどではドローンによる点検も取り入れている。現在は、ドローンを目視内飛行(レベル1~2)で活用しているが、将来の労働力人口の減少を見据え、より効率的に点検業務を行うために、目視外飛行(レベル3~4)の活用も必要と考えている。
こうした中、目視外飛行に伴う立入管理措置(無人航空機の飛行経路下において、第三者の立入りを制限すること)の効率化に繋がるレベル3・5飛行の実証実験を実施した。また、安全に点検業務を行うため、鉄道設備との適切な離隔の確保などドローンの経路管理についても、あわせて検証した。
今回、レベル3・5飛行で東海道新幹線のトラス橋(愛知県一宮市~岐阜県羽島市の区間)の撮影を実施し、UTM及び経路逸脱検知機能(ドローンが指定経路から一定距離を離れて飛行している状態を検知する機能)を活用したドローンの目視外・自動飛行による点検業務の実証実験を行った。
実施体制は次の通り。
◇実施事業者▽JR東海=企画、実証フィールドの提供▽スカイピーク=プロジェクト全体統括、レベル3・5飛行における運航業務。
◇協力事業者▽トラジェクトリー=航空管制システム提供、3Dデータに基づく空間情報管理及び飛行ルート設計、飛行中リモート管制業務▽イームズロボティクス=機体提供および改造対応▽バウンダリ行政書士法人=飛行申請支援。
実証実験の結果、ドローンのレベル3・5飛行、UTM及び経路逸脱検知機能を活用することで列車が安全に運行できる十分な離隔を保ちながら点検業務を実施できることを確認した。また、目視外・自動飛行における遠隔でのオペレーションなどの管理体制についても検証した。
両社は今後も点検業務の更なる効率化・高度化を目指し、検討を進めるとしている。
スカイピークは電波タイムス社の取材に対して「当社は、産業ドローン分野における人材育成および新規事業の推進を主軸として事業を展開しております。本実証実験においては、プロジェクト全体の統括およびレベル3・5飛行における運航業務を担当いたしました。鉄道施設における多数の飛行実績に加え、2020年より取り組んでいる目視外飛行オペレーター育成の知見、および産業ドローンに関する教育・訓練実績を活かし、本実証ではドローン運航業務のみに留まらない支援を行いました。鉄道施設周辺で安全に点検業務を行うためのドローンの経路管理や、目視外・自動飛行における遠隔でのオペレーションなどの管理体制全般にわたるノウハウの提供を行いました」と話している。
※UTM:Unmanned aerial system Traffic Management、ドローンを安全に飛行させるため、飛行計画や飛行状況等の情報を管理するシステム
※無人航空機の飛行レベルについて:レベル1=目視内での手動操縦飛行。レベル2=目視内での自動/自律飛行。レベル3=無人地帯での目視外飛行(立入管理措置が必要)。レベル3・5=無人地帯での目視外飛行において、機上カメラの活用、操縦ライセンスの保有、保険への加入を条件として、補助者・看板の配置や一時停止等のこれまでの立入管理措置を撤廃し、道路や鉄道等の横断を容易化した飛行。レベル4=有人地帯における目視外飛行。
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
最新の投稿
情報通信2025.05.09JR東海とスカイピーク、鉄道施設におけるドローン目視外飛行運用の検討で契約
情報通信2025.05.02サイエンスアーツ、消防庁実証報告でBuddycomの活用可能性に言及
情報通信2025.05.02NEC、地上での光空間通信で国内最長となる10㌔㍍超の通信に成功
筆心2025.05.022025年5月2日(7806号)