蚕蛾センサが下水道の危険ガスを検知
蚕蛾(カイコガ、蚕の成虫)の触角をセンサ素子として搭載した匂い追跡ドローンが、下水道の危険ガスを検知・探索するという画期的な技術開発が進められている。
これは信州大学繊維学部(信大、長野県上田市)の照月大悟准教授の研究室が進めている技術で、社会インフラの点検作業やガス漏れ検知などでの実装を想定している。
なお、同学部は日本唯一の繊維学部で、上田市が蚕糸業の拠点=”蚕都”(さんと)としてその名を誇った頃、日本の蚕糸業の発展を目指して上田蚕糸専門学校として産声を上げた。繊維関連産業はすでに衰退してしまったが、地元では養蚕業盛んだった頃の名残りで、蚕のことを”おかいこさん”と呼んでいる。
カイコガ触角センサを搭載した匂い追跡ドローンは、昆虫触角の匂い応答を電気信号として読み出し、ドローンで空中の匂いを検知・探索するバイオハイブリッドセンシング技術である。
昆虫は、空気中の匂い分子を手掛かりに、エサや交尾相手を探索する。カイコガのオスは、メスの放出するフェロモンを触角で検知し、メスを探す。
そのカイコガ触角をセンサ素子として電極に接続し、匂い刺激に対する微小な電気信号を取得する。
そして小型化した触角センサをドローンに搭載し、空中の匂いをリアルタイムに計測する。得られた応答から、匂いの発生源を自律的に探索する。
信大はこのほど、幕張メッセで開かれた「Japan Drone2026」に千葉大学と共同で出展し、次世代の匂いセンシングおよび匂い源探索ロボット・ドローン技術を紹介した。生物由来センサが匂い情報を読み取り、変動する気流環境の中で匂い源へ向かう自律移動の実演・展示を行った。ブース内では低速走行ロボットによる安全なデモ=写真=を実施し、ドローン応用を想定したシステム構成や制御手法も紹介した。
会場で話を聞いた照月准教授は「昆虫の優れた嗅覚機能を工学的にセンサとして応用した。匂いでメスを探す生態を利用して、空中の匂いを追跡する。想定される活用例としては、下水道の危険ガス検知・探索や、インフラ・プラントの点検、災害時の化学センシング、ガス漏れ検知が挙げられる。例えば、下水道に発生した腐食、劣化の兆候となり得る硫化水素の検知で、匂い追跡ドローンを飛ばして空中計測を行い、匂い発生源を探索するといった使い方が考えられる」と話した。
高速応答で検出するセンサシステムによって配管、下水、プラント、閉鎖空間など、人の立ち入りが難しい環境での早期異常検知を目指す技術という。
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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