NHK  TECH WEEK 現場ならではのノウハウ・アイデア/放送メディアの未来のビジョン

 NHKは13日、メディア説明会「NHK TECH WEEKの見どころ解説」を開催した。NHKは2025年5月の最終週を「NHK TECH WEEK」とし、NHK技術部門の最新の研究開発成果や取り組みなどを一般の人に紹介する2つの一般公開イベント、「NHK TECH EXPO 2025」と「技研公開2025」を開催する。

 まず「NHK TECH EXPO 2025」を5月26日(月)から28日(水)までの3日間、東京都渋谷区のNHK放送センターで開催する。番組制作や緊急報道、電波確保など、全国NHKの現場ならではのノウハウ・アイデアから生まれた機材やサービスなどを20項目(地域7件、関連団体2件)展示する。

 NHK TECH EXPO 2025について、メディア技術局 チーフ・エンジニアの浜中邦基氏が説明した。大きく三つのゾーンに分けて展示を行う。一つ目は、「大切な情報を確実に届けるために」というタイトルでコーナー化しており、命と暮らしを守るための情報を確実に届けるための取り組みや災害時にも、放送やサービスを継続するための工夫開発、皆様に生活に関わる部分で確実に届けなければならない情報をよりわかりやすく届けるための取り組み等を紹介する展示のブースとなっている。続いて「新しい発想で魅力的なコンテンツを」では、コンテンツ制作を中心にそこに資する開発の展示を集めたものになる。三つ目が「体験体感してみよう!」で、実際に来場した方に体感してもらおうというコーナーになっている。

 主な展示としては、ネットワークカメラを挙げた。これまで伝送用の回線の確保が難しかった場所での伝送を可能にした可搬型ネットワークカメラ伝送システムや、通信手段、電源を喪失した場合でも機動的にロボットカメラを設置できるようにしているネットワークカメラ映像伝送ボックスなど自然災害などの厳しい環境の中でも正確な情報をリアルタイムにかつ確実に届けするための取り組みなどを紹介する。この他、番組マスコットキャラクター「ちるる」を番組と同じように操演できる「ちるるアニメーター!」や、人が立ち入ることが難しい場所での撮影を可能にする定点カメラや地表探査ローバーを紹介する。さらに、体験体感してみようのコーナーから、MRデバイスを用いてオブジェクトを自分の手を使って自由に操作することができるという「MRcast」も紹介する。

 「技研公開2025」は、5月29日(木)から6月1日(日)までの4日間、東京都世田谷区のNHK放送技術研究所で開催する。未来を見据え、放送技術分野の基礎から応用まで幅広く取り組んだ研究開発の成果を紹介。 今年は「広がる つながる 夢中にさせる」をテーマに 18 項目を展示する。昨年の技研公開2024では約1万2000人が来場したという。

 技研公開2025について、放送技術研究所 研究企画部 副部長の相原聡氏が説明した。まずNHK技研は、ラジオテレビジョン放送の研究を行うために、ラジオ放送開始5年後の1930年に設立された。NHKの中の一つの部署で、放送技術に関することを取り組んでいるという組織にとなる。技研の業務につきましては放送法第20条1項の3番目に「放送およびその受信の進歩発達に必要な調査研究を行うこと」と、規定されており、この責務を果たすため番組制作から送受信表示まで放送メディア技術の基礎から応用実用化までを研究開発を進めるというとともに標準規格化ということで世界の放送メディアの発展に貢献している。

 技研公開は、今年はイマーシブメディア、ユニバーサルサービス、フロンティアサイエンスに加え、直近の課題解決に貢献する「メディアを支える」と分けて展示する。
 イマーシブメディアからは「広がるコンテンツ体験」。ARグラスをかけて遠く離れた人と一緒に同じ番組を見ながらコミュニケーションを楽しむ。また、手で持っているものディスプレイに合わせて振動したり、物の温度が変わったり、香りが出たりというそういう多感覚を提示する装置を用いて未来のコンテンツ体験を体験できる。
イマーシブメディアでは、画素数30Kの360度カメラで撮影した映像を15K相当プロジェクターを用いた半球スクリーン装置(直径3m、床面積4m×4m)に表示する。半球スクリーンをマルチチャンネル音響で没入感を体験できるという。
 イマーシブメディアでは、シーン適応型カメラも展示。新たに4Kエリア制御イメージセンサを開発した。4×4画素を基本として制御するもので、高速モードでは画素数を統合(2×2画素)にすることでフレームレートを向上させている。画素数は1/4となるが、フレームレートは4倍の240フレーム/秒を実現した。まだプロトタイプであり、実際の製品化には数年かかるという。
 ユニバーサルサービスでは「つながるメディアアクセシビリティー」を紹介。視覚や聴覚に障害のある方や、高齢者・外国人などあらゆる人々に情報を伝えるということで、今回はそれらの技術を統合した将来的なサービス例として音楽連動アクセシビリティアプリというものを展示する。
 「NHK TECH EXPO 2025」および「技研公開2025」は入場無料で、事前予約なしで誰でも入場可能。

TOP画像は相原聡氏㊨、浜中邦基氏

全文は5月16日号3面に掲載


NHK TECH EXPO 2025


技研公開 2025