NTT東日本「防災研究所」を設立へ

 NTT東日本は、地域防災の新たな仕組みを研究する下部組織として、「防災研究所」を4月1日付で設置すると発表した。NTT中央研修センター(東京都調布市)で1月21日に開催した同社グループ「地域ミライ共創フォーラム2025」の中で明らかにした。
 同社によると、地球温暖化等による災害の激甚化・頻発化、人口減少・少子高齢化等による自治体職員の減少や要配慮者の増加等、地域の防災を取り巻く課題が深刻化していることを背景に、官民連携で先端テクノロジーを有効活用した強靭かつ持続可能な地域防災の仕組みづくりが必要であることから、地域防災モデルの研究や地域実装に専担的に取り組むことを目的に防災研究所を開設し、地域防災力の高度化に貢献するとしている。
 同社ではこれまでに、災害発生時における早期通信インフラの復旧や東京ガスネットワーク、東京電力パワーグリッドらインフラ企業との災害対応連携、ICTを活用したデータ収集の迅速化・効率化や住民への情報配信など防災や減災に向けた取り組みを進めてきたという。
 こうした取り組み等を通じて得た豊富な人材や財産、地域通信事業で培った知見や災害対応力・実装力、地域との関係性を最大限に活かしながら、自治体の災害対応をトータル的に支援する仕組みを創り上げ、高度化していくとしている。
 具体的に、事前の備えとして基本計画策定や備蓄品の管理、発災後には、AIを活用した河川や港湾、道路での水害監視・予測、各種センサーやカメラ等を通じた現状把握や災害情報の一元化による意思決定の判断支援、また電話やアプリ、メール等を活用した避難時の情報配信や伝達、罹災証明発行支援やドローンパイロット育成といった災害復旧に向けた支援等を組み合わせた地域防災モデルの研究を進める。
 開設に先立ち、自治体の防災力可視化を目的に同社管轄エリア内の自治体114カ所を対象に自治体の防災力に関するヒアリング調査を実施。この結果を基に、「いのちをまもる避難誘導」の実現に向けて、「データを活用した避難状況予測による避難情報発令や避難行動の支援に関する研究」「情報の整理による自治体本部運営の最適化の研究」「要配慮者の支援を可能とする仕組みづくりに関する研究」の各テーマを策定した。
 今後はこれら研究テーマを進めながら、フィールド実証を通じた研究内容の活用・改善、研究成果の地域防災計画への反映や活用の定着までの伴走支援、高齢者等の要配慮者を見守り、支援する地域支援ネットワークを構成する人々を対象とした、防災に関する知見向上に向けたワークショップの開催等取り組みを進めているとしている。
 自身も福島支店長時代に東日本大震災を経験したという澁谷直樹社長は、「現地で災害を経験し、社員と復旧作業に携わる中で自分が設計してきたネットワークがずたずたになる経験をして、もっとやらなければいけないという気持ちを持った。社長着任以来一番やりたかったテーマの一つが防災だが、企業として儲けるという甘い考えで取り組んではいけない領域。今NTT法で最終保証義務を盛り込むことを議論しているが、地域を守り続けることを法律の中に定義する会社として地域の安心安全を守る使命を一歩踏み出して取り組む意思表示が重要と考えている」と話した。
 また他企業や行政との連携の重要性を強調し、「会社という形ではなく、ニュートラルな形でNTT東日本だからこそ一緒にやろうという大きな呼び水の動きを作るためにあえて研究所という形で設置させていただきたい」と述べた。
 また研究所の立ち上げ準備を担当してきた同社ネットワーク事業推進本部設備企画部の笹倉聡担当部長は「喫緊の課題は命を守ること。そのための避難誘導の仕組みをけん引すべく研究を進めて成果を提言しながら地域の皆さんと実装に向けて伴走し、地域防災力の高度化、安全安心を確保できる地域社会を実現すべく成長させていきたい」と話していた。 

この記事を書いた記者

アバター
kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。