
JEITA新会長の漆間氏就任会見、ソフトウェア開発とDX推進を強調
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、6月11日付で「第15回定時社員総会」を開き、前会長の津賀一宏氏(パナソニックホールディングス株式会社取締役会長)の任期満了に伴い、新会長として漆間啓氏(三菱電機株式会社代表執行役執行役社長CEO)の就任を決定したと発表した。同日、東京都千代田区のJEITA事務局とオンラインで就任会見が開かれ、漆間新会長は「前身の2つの団体が統合し、2000年にJEITAが発足して今年で25周年を迎える。歴史の重みを感じつつ、会長としての責務を果たしたい」と抱負を語った。任期は1年間。
漆間会長は就任のあいさつとして、「目下、地政学リスクや関税など、世界中で不確実性が高まっていることは言うに及ばず、これらに対抗していくためにも、日本の潜在成長率や労働生産性の低さの改善こそが喫緊の課題となる。解決のカギはデジタルにあり。単にデジタル技術を導入するだけでは足らない。DX、すなわちデジタルによる真のトランスフォーメーションを社会全体で推進することが求められる。キーワードはソフトウェア開発力。昨年12月、当協会の調査において、モビリティ産業とデジタル技術の融合分野である『自動車の SDV化』の今後の飛躍的な伸びを予想したが、ソフトウェアの重要性が高まるのは車に限らない。いわゆる『Software Defined X』の時代に突入しつつあるいま、あらゆる産業が、デジタルテクノロジーを使いこなすためのソフトウェア開発力が勝負の行方を左右する。例えばものづくり。コロナ禍、そして昨今の動向から、製造業の重要性が世界中で高まった。ものづくりをこれからも日本の強みとするためには、過去の成功体験から脱却し、熟練した強い現場力とAIをはじめとするデジタル技術を組み合わせ、新たな成功モデルを構築することが不可欠。スマホ等 BtoCの分野で指摘される「デジタル赤字」と同じ道を歩まないために、BtoB の分野におけるデジタルトランスフォーメーションこそが、今後の最重要課題になると考えている」として、デジタルテクノロジーを使いこなすためのソフトウェア開発力とこれに伴うDX推進の重要性を強調した。
またこれを踏まえて注力する三つの取り組みとして、「製造業におけるソフトウェア開発力の底上げ」と「サプライチェーンへの対応」「テクノロジーの進化と社会との調和」を掲げた。
1つ目の「製造業におけるソフトウェア開発力の底上げ」については、「AI、ロボティクス、量子、IoT など、デジタル技術を活用するユーザー企業と連携し、より一段とギアを上げて、社会実装に取り組む必要がある。そのためには、大きな流れを生み出すための仕組みづくりが大切であり、その1つが、JEITA が主催する展示会『CEATEC』。CEATEC はデジタルによる価値や社会課題解決を披露する場へと大きく変貌しつつある。昨年のジャパンモビリティショービズウィークとの併催が記憶に新しいが、自動車産業に限らず、あらゆる産業のDXを加速させるための舞台としてのCEATECの価値を今後も高めていく。また、今年3月、「Media over IP コンソーシアム」を発足させたが、これも、ソフトウェアの活用を加速させる施策の 1 つ。放送事業者とメーカーの連携により、国内のコンテンツ競争力の強化を図る。このほか、他産業やアカデミア、政策立案の専門家などからの知見も得つつ、共創のための仕組みづくりを進めていく」と述べた。
2つ目の「サプライチェーンへの対応」については、「共通の課題として、経済安全保障、サイバーセキュリティ対策、地政学リスクやサステナビリティへの対応など、サプライチェーンを取り巻く課題が増え続けている。サプライチェーンの問題は一社だけで解決できるものではなく、複数の企業が協力し合うことが重要なことから、業界団体として積極的に取り組むべき領域であると考えている。各課題に対応した組織体制を構築し、JEITA は推進役となって、リソースやネットワークをフルに活用しながら今後も継続的に取り組んでいく。また、データ連携やトラストの基盤となるデジタルエコシステムの整備といった、官民の緊密な連携・協調が必要な取り組みについても、JEITA として対応していく」と業界全体でサプライチェーンを強化する考えを示した。
最後の「テクノロジーの進化と社会との調和」については、「DXを加速させていくためには、生成AI やデータ利活用といった社会的影響の大きな技術に対して、産業界が自らルール形成を関与し、倫理と透明性を重視したガバナンスを構築していく必要があり、安心してデジタル技術を活用できる環境整備が急務。JEITAでは『AI ポリシー』を策定、公開した。人と AI が共生する社会の実現を目指し、社会と調和した AI の普及を促進していく。JEITA は会員各社と共に、AI を積極的に利活用することで社会的価値を創出し、持続可能な社会の実現に貢献する。時代の大きな転換点とも捉えられるいま、皆さまのご指導とご協力を賜りながら、1年間、JEITA 会長として、デジタル産業のさらなる発展に尽力し、社会に貢献していく」と呼び掛けた。
◆
漆間氏は1959年7月生まれで大分県出身。早稲田大学商学部卒業後、1982年4月に三菱電機に入社。Mitsubishi Electric Europe B.V. 取締役社長兼国際本部欧州代表や、代表執行役専務執行役経営企画・関係会社担当(経営企画室長)等を経て2021年7月から取締役代表執行役執行役社長CEOを務めている。
この記事を書いた記者
- 主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。
最新の投稿
情報通信2025.06.30新会長に副会長の受川氏、陸上無線協会臨時理事会で新体制
情報通信2025.06.30全国陸上無線協会で通常総会、6年度決算報告や役員人事案など承認
筆心2025.06.302025年6月30日(7828号)
行政2025.06.30総務省、リチウムイオン電池火災頻発で調査結果公表