北極の冬季海氷域面積が最小を更新 極地研・JAXA、衛星搭載マイクロ波長期モニタリング
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所(極地研、東京都立川市、野木義史所長)によると、2026年の北極の冬季海氷域面積(年間最大面積)が、衛星観測が開始された1979年以降で最も小さい値となり、2025年3月に続き最小記録を更新した。衛星搭載マイクロ波放射計による長期北極海氷モニタリングにより、北極の冬季海氷面積が広がりにくく昨年に続き衛星観測史上最小を更新したことが明らかとなったもので、今後も気候変動に関わるモニタリングと、より精緻な分析及び情報発信を進めていくとした。
極地研と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、北極域研究強化プロジェクト(ArCSⅢ)の一環で、水循環変動観測衛星「しずく」(GCOMーW)に搭載された高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)をはじめとしたマイクロ波放射計による観測データをもとに、40年以上にわたる長期的なデータセットを整備し、北極・南極の海氷域面積の時間的・空間的な変化の可視化や、北極域データアーカイブシステム(ADS)のウェブサイトでの公開を通して、極域環境変動監視に貢献している。
例年、北極の海氷域面積は10月から3月に拡大し、4月から9月に縮小する季節変動を繰り返す。今冬(2025年11月から2026年2月)の海氷域面積は、直近の2010年代の平均と比べても小さい値で推移。結果として、3月13日に記録した1376万㎢が2026年の北極の冬季海氷域面積の最大値となった。この値は、冬季海氷域面積の最小記録だった昨年よりも3万㎢小さく、衛星観測開始以来で最も小さい値となる。
北極海の海氷域分布=図参照=で示される2026年3月13日の海氷縁(白色と青色領域の境界)を2010年代平均と比較すると、オホーツク海では昨年に続き海氷域が顕著に小さい状況となっていた。また、グリーンランドとカナダの間に位置するバフィン湾・ラブラドール海の南側でも海氷が小さい状況だった、
海氷域面積が縮小した要因を詳しく見ていくと、本年1月から2月にかけて、オホーツク海やバフィン湾・ラブラドール海では気温が平年より高く、海氷が南川へ広がりにくい状況が続いていた。さらにオホーツク海では、2月中旬から3月中旬の期間も東~南東から風が卓越し、昨年の同時期よりも気温が高かったことが示されている。その結果、オホーツク海では2月19日を境に海氷域面積が減少に転じ、このことが北極域全体の海氷面積が広がりにくい要因になったという。
AMSR2は13年を超える運用を続けており、JAXAでは後継センサのAMSR3の観測データの一般公開に向けて準備を進めている。海氷は気候システムの重要な要素であり、その変化は極端気象や海洋環境にも影響を及ぼす可能性がある。また、北極海氷は地球温暖化の進行の中で変化に歯止めがかからなくなる可能性があり、気候システムに連鎖的な影響を及ぼすことが予測される。
さらに、AMSR3はセンサの新たな特長として、海氷だけにとどまらず降雪観測も可能となり、北極をはじめとする寒冷域の環境を多角的に分析できるようになる。今後は、AMSR3を含む衛星搭載マイクロ波放射計の観測データを活用し、気候変動に関わる継続的なモニタリングと、より精緻な分析及び情報発信を進めていく考えである。
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※海氷域・海氷域面積:海氷域は、海氷密接度(ピクセル内に含まれる海氷の割合)が15%以上の領域と定義。海氷域面積は、通常の北極・南極海氷域面積の計算では、データ欠損による算出エラーを防止するため、複数日データの平均から算出している。
※北極域研究強化プロジェクト(ArCSⅢ):2025年に始まった、国の北極域研究プロジェクト(代表機関:極地研、副代表機関:海洋開発機構・北海道大学)。内閣府総合海洋政策本部が推進する北極政策の一つでもある。
※北極域データアーカイブシステム(ADS):ArCSⅢ等において、北極・南極で取得された観測データやモデルシミュレーション等のプロダクトを保全・管理するためのデータアーカイブシステム。
※高性能マイクロ波放射計3(AMSR3):現在校正検証中の温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」(GOSATーGW)に搭載。2025年10月に定常運用を開始。
この記事を書いた記者
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